2014.11.12

 

細めのメガネにストライプ柄のグレースーツ。カメラに向かう姿がビシッと決まる。何ともカッコイイ。この1年、ドラマに映画に出ずっぱりなのも無理はない。さらに、この忙しいスケジュールの中、アルバムを発表し、全国ツアーまで行っている。今や絶好調だ。

 

昨年のドラマ「半沢直樹」(TBS系)で演じた銀行マンが記憶に新しいが、今月23日スタートのWOWOWの連続ドラマW「悪貨」(日曜午後10時、全5話)では巨額の資金を操る投資家、野々宮冬彦を演じる。

 ニセ札で日本の破壊をたくらむ悪役だが、「野々宮って男は、死と隣り合わせの場所で生きている。絶望感というか、世の中に期待してないんですよね。でも、この役はストレスの発散になります」と意気込む。

 来年はデビュー20年目の節目を迎える。当初は“王子様”のイメージが先行したが、次第にそれが負担になっていった。

 「最初はスターごっこでした。それがデビューから2、3年経ち、バラエティー番組で王子様として扱われ、全国的にもミッチーというキャラクターが浸透したとき、何だか窮屈になったんです。そのころが一番しんどかったな」

 この苦境から抜け出せたのは、あの大物の言葉だった。

 「美輪明宏さんのアドバイスに救われたんです。当時、相談に乗っていただいたり、愚痴を聞いてもらったりしていたんですよ」

 “人間は誤解されて当たり前。だから、誰がどう思おうが、自分の美意識で選んだ道を行けばいい”という言葉が心に響いた。「この言葉でふっきれました。僕は僕なりにやればいいんだと」

  「僕なり」の生き方。それがミッチーのアイデンティティーでもある音楽だった。来春には新アルバムを予定している。いつもストーリー性のあるコンセプトア ルバムで楽しませてくれるが、新作は、「まだドラマの撮影に集中しているので、構想はこれから。ただ、ベスト的なものになるのでは」と話す。

 全国ツアーも控えている。約2時間のステージは、華やかな衣装、分厚くゴージャスなサウンド、そしてドラマチックな演出と、まさにエンターテインメント全開のサービス精神で知られる。

 「僕のつくるアートワークって、影響を受けた先達のミックスですから。完全オリジナルの見たこともないエンターテインメントを生みだそうなんて、大それたことは考えてないです。ミックスのブレンドに、独自性があればいいかなって思っています」

 「僕なり」の最高のものをみせたい。そう思うほど、自然とハードルも高くなる。

 「経験値が上がると、及第点も上がるので、下りのエスカレーターをガシガシと登っていくような感覚。気を抜くと降りてしまう。いつまでたってもうぬぼれられないですね。いつかはうぬぼれることができるのかなあ」

 20年経っても、そのイメージは変わらない。若さの秘密はいったい何だろう。

 「いやいや、40歳超えてからは、いつもへとへとですよ。歌って踊るのが僕の存在理由ですが、お客さまの拍手喝采があるからこそ、頑張れるんです。やっぱり“愛”じゃないですか」

 “愛”がエネルギー。ますます神秘性が高まっていくが、「時間があるときには、家のルームランナーで30分ほど走っています。後は食事。今は炭水化物は控え気味に…。太るからねえ。好物のナポリタンを我慢するのはつらいですよ」と四十男の現実もチラリ。

 「よく私生活のにおいがしないといわれますが、本当はプンプンにおってますよ」と言いつつ、こんなうらやましい話も。

 「朝早く出るときなんか、妻(檀れい)が弁当をつくってくれるんです。保温ジャーの弁当を手渡されて。この前はブロッコリーと豆と鶏のささみのスープ。健康的でしょ」

 せっかくなので、もう少しおふたりの話を…。

 「逆に、僕がつくってあげるのは、やっぱりナポリタンだなあ」

 彼にとってのヒーローは何といっても歌手のプリンス。80年代から第一線で活躍し続ける米ポップス界のレジェンドだ。

 「強く衝撃を受けたので呪縛に近い感じ。歌う、踊る、派手な衣装を着る、そして色気を売りにする。50歳までは、この路線で頑張っていきたいと思うんですけどね」

 日本のプリンスここにあり。 (ペン・福田哲士 カメラ・高橋朋彦)


 ■おいかわ・みつひろ  歌手、俳優。1969年10月24日、東京都生まれ。45歳。96年に「モラリティー」で歌手デビュー。愛称はミッチー。97年の薬局「マツモトキヨシ」 のCMで一躍全国区に。98年、フジテレビ系「WITH LOVE」でドラマデビューし、俳優活動も始める。同年のコンサートで「王子転職宣言」。11 年、女優の檀れいと結婚した。

 代表作は、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(2010年)、「八重の桜」(13年)、テレビ朝日系「相棒」(09~12年)、TBS系「半沢直樹」(13年)など多数。23日から「悪貨」(WOWOW)がスタートする。

 音楽活動では、これまでにシングル19枚、アルバム17枚を発表。ライブツアーのDVDなども16枚出している。

 
 
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    及川光博
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